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テレビを観るのが、ここのところちょっと嫌になってきています。3月11日以降、悲しい話ばかりが放送されるからです。恐ろしい形相をした津波に飲み込まれてゆく家や車の映像を、あれからいったい何回目にしたことでしょう。映像の奥では、たくさんの方たちが、恐怖に怯えながら命を奪われているのです。誰も乗っていない車ではありません、誰も住んでいない家ではありません。津波から逃れるために車を必死で走らせていた方もいたことでしょう、高齢のために家から離れられなかった方もいたはずです。すべてが津波に飲み込まれてしまいました。その数は2万数千人におよびます。
庭につながれていた犬も、エサをもらいに来ていた猫も、ごっそりと波にさらわれてしまったに違いありません。その後も警戒区域に残された犬猫、牛や馬の姿をカメラは追っていました。生きとし生けるものすべてを不幸に陥れた地震。致命傷はメルトダウンしてしまった原発でした。つい2ヶ月前までは、人も動物もこのうえなく平穏に暮らしていたというのに、その生活のすべてを大災害がぶち壊してしまったのです。千年に一度あるかないかというほどの大災害にめぐり合ってしまった私たち、それは運命なのでしょうか・・・
ちょっと道を走れば、一面に田んぼが広がるというこの地域。この間まで真っ黒い土しか見えなかった田んぼが、もうすっかり稲の緑に覆われています。昔は田んぼに行けばサリガニやどじょう、あめんぼ、めだかなどたくさんいたものでしたが、今は生き物の姿はなにもありません。農薬でほぼ絶滅してしまったのでしょう。
稲が稔る頃には田んぼを多い尽くすほどいた雀も、ほとんどその姿が見られなくなりました。雀は害鳥として駆除しているようで、先日、「明日、朝6時から害鳥の駆除を行います。安全には十分に注意しますのでよろしくお願いします」という放送が流れました。何も知らずに夜の闇の中で眠る鳥たち、何も知らずに朝を迎える鳥たち、その鳥たちの運命を思うと、なんとも気が重くなるばかりでした。明け方聞こえるパスッ、パスッという銃の音に命の消える瞬間を思い、ひたすら耳を塞いでいました。共存はもう不可能なのでしょうか。
自然の多い田舎に住んでいると、時々、都会の風が無性に懐かしくなります。緑もないし、鳥の声も聞こえないし、狭い土地で、窓をあければ隣の窓。実際にそんな生活をしたら、すぐに息が詰まって逃げ出したくなるだろうとは思うのですが、人間関係が濃密な田舎暮らしから開放されたいと、時々真剣に思うことがあります。
先日、ちょっと用事があって新宿(東京)に出かけました。久しぶりにの雑踏の中、都会の雑然とした空気がとても心地よく感じました。住宅街に足を踏み込んで、改めて一軒一軒の土地の狭さに驚いたりもしたのですが、それでも、都会の家並はどことなく垢抜けていて、フェンスやその建物のモダンな色使いや形に、なんとなく安堵を感じます。
やっぱり、都会に戻りたいなあ…そう思いながら歩いていると、ちょっと豪華なお屋敷。でもなんだか荒れています。庭は草ボウボウで、よく見ると、塀伝いに100本はあろうかという水入りのペットボトル!侵入者を嫌ってのことなのでしょう。たぶん、猫だと思います。土地が狭いということは、お互いの領域を簡単に侵せてしまえるということなんですね。人間以外が住む余地を失っている場所、それが都会なのかもわかりません。
暖かくなる3月から4月ごろ、写生の道具を持って姉と江戸川に遊びに行くのですが、土手に野蒜や土筆が顔を出していて、絵を描くどころではありませんでした。野蒜や土筆を取るのが面白くて仕方がないのです。 その頃は、こんなに採っても家族だけでは食べきれない…というほどの野蒜や土筆が採れました。今ではその姿を探すのさえ難しくなりました。
野蒜は生のままでお味噌をつけて食べたり、天ぷらにして食べるのです。土筆はチクチクするハカマを取り除いて、甘辛く煮ます。どちらも酒の肴にはうってつけですが、子供にはとてもおいしいと思えません。でも、それをつつきながらお酒を飲んでいる父親の姿は、とても幸せそうでした。幸せそうな父親の顔見たさに、必死で土筆採りをしていたのです。
今年はなぜか昨年より実のつき方が悪く、全部で20個ほど。でも、その甘さときたら、店頭に売られている枇杷なみ。で、話はググンと下世話になりますが、枇杷ってお高いんですねえ・・・。10数個入って2000円ぐらいするのをみて、ちょっとびっくり。それを思うと我が家の枇杷・・・ああ、ありがたいありがたい。なんだかやたらと甘みが増して感じられます。実のなる木っていいですね。
♪桃栗3年、柿8年、梅はすいすい13年、ユズは大バカ18年、りんごニコニコ25年
女房の不作は60年、亭主の不作はこれまた